音楽 MUSIC

あの頃受けた影響は計り知れないですよね そんな音楽をとことん語るコーナーです。

集中連載「プリンスを語ろう」Vol.03

3rdアルバム「Dirty Mind」

デモテープのまま世に出た“思想と性”の実験作


はじめに

**シオジリケンジ(通称:シオケン)**と
**音楽ライター・神崎いろは(通称:いろは)**が、
Princeのアルバムを1作ずつ語る連載
「プリンスを語ろう!」

Vol.1『For You』で才能を証明し、
Vol.2『Prince』で自分の名前を“基準”にした彼が、
次に取った行動は――すべてを削ぎ落とすことだった。

1980年発表、3rdアルバム
『Dirty Mind』
これは名盤である以前に、事件だ。


「これ、完成してない…ですよね?」

いろは:
シオケンさん、正直に言いますね。
『Dirty Mind』、最初に聴いたとき
「え、これデモですよね?」って思いました。

シオケン:
うん。
それ、ほぼ正解

いろは:
音が生々しすぎるし、
ミックスも荒いし、
前作までと別人みたいで。

シオケン:
プリンス自身も、
「これは完成形じゃない」って分かってたはず。
でも、それでも出した


「ほぼ宅録。思想が音を追い越した」

いろは:
制作環境からして異常ですよね。

シオケン:
ほぼ宅録。
ドラムマシン、シンセ、ギター、声。
最小限の機材で、短期間。

いろは:
前2作の“完璧主義”はどこへ?

シオケン:
あえて置いてきた。
この作品で重要なのは音のクオリティじゃない
伝えたい思想と衝動。

いろは:
だからデモ段階で止めた。

シオケン:
止めたというより、
止めないことを選んだ


「削ることで、異常さが露わになる」

いろは:
音数、びっくりするくらい少ないですよね。

シオケン:
うん。
ドラムマシン+シンセ1音+声、みたいな曲ばかり。

いろは:
でも、その分、
歌詞とニュアンスが逃げ場なく迫ってくる。

シオケン:
それが狙い。
装飾を剥がすと、
性的な言葉、政治的な視線、違和感がむき出しになる。

いろは:
ファンクというより、
思想の朗読に近い瞬間もあります。


「これはエロじゃなくて、挑発」

いろは:
正直、当時これを聴いたら
かなり“危ない人”ですよね。

シオケン:
完全に危ない(笑)。
でも重要なのは、
これは色気じゃない。

いろは:
じゃあ、何ですか?

シオケン:
性を使った思想表明
ジェンダー、欲望、道徳、
全部をひっくるめて揺さぶってる。

いろは:
聴き手を選別しているようにも感じます。

シオケン:
それも正解。
『Dirty Mind』は、
「ついてこれる?」っていう踏み絵。


シオケン:
『Dirty Mind』は未完成だ。
でも、未完成だからこそ本音がある
プリンスが初めて
「売れるかどうか」を手放した瞬間だと思う。


いろは:
次回は、
この“危険人物”が
ポップカルチャーの中心に躍り出る直前。
狂気と知性がせめぎ合う
**『Controversy』(1981)**を語ります。

——続く。

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。