
SF青春ホラーの最高峰「パラサイト」(原題:The Faculty 1998)深掘りレビュー!
🎬 『パラサイト』 (The Faculty, 1998)
監督:ロバート・ロドリゲス / 脚本:ケヴィン・ウィリアムソン

制作・時代背景
1990年代後半、ホラー映画は『スクリーム』の成功で再び脚光を浴びていました。ウィリアムソンが生み出した「メタホラー」の文脈の中で、よりSF的な要素を織り込み、かつ学園ドラマを融合させた企画として登場したのが『パラサイト』です。
この時代、ハリウッドでは「10代の青春」と「恐怖」を組み合わせた作品の人気が高く、まさにティーン市場をターゲットにした映画が乱立していました。
『パラサイト』はその流れをさらに押し広げ、「ボディ・スナッチャー(人間侵略もの)」の伝統的モチーフに、90年代らしいティーンドラマの色を乗せた作品です。
脚本のウィリアムソンは、『スクリーム』で確立した青春ホラーの語り口をSF侵略テーマに転用し、ロドリゲス監督のスピーディーな演出と組み合わせることで、当時の若者に刺さる映画に仕上げました。
作品のあらすじ
オハイオ州の高校を舞台に、生徒や教師が次々と異常な行動を見せ始める。
原因は、地球外生命体による寄生であった。
アウトサイダー的な立場の高校生たちが協力し、学校を牛耳る宇宙生命体に立ち向かう——
という青春×SF×ホラーの王道ストーリーです。
作品の革新性
- ジャンル融合の妙
伝統的なボディスナッチャーもの(『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』など)に、90年代のティーンドラマ、学園青春群像劇を大胆にミックス。
SFファンとホラーファン、さらに学園青春映画ファンまで取り込むバランス感覚が光ります。 - キャスティング
当時フレッシュな若手だったジョシュ・ハートネット、イライジャ・ウッド、ジョーダナ・ブリュースターらを起用。
また、教員役にロバート・パトリック(『ターミネーター2』)、サルマ・ハエック、ファムケ・ヤンセンなどを配置し、大人世代の観客にもアピールしました。 - “スクールカースト”の批評性
アウトサイダーの高校生たちが寄生生物に支配される教師に反抗する構図は、当時のアメリカの学園社会におけるヒエラルキーを風刺的に描いたとも言えます。
興行収益・評価
- 全米興行収入:約40,300,000ドル
(製作費は約15,000,000ドル程度と言われています)
→十分に黒字の成功作でしたが、『スクリーム』のような爆発的大ヒットには及ばず、ややカルト的人気にとどまっています。 - 全世界興行収入:約63,200,000ドル(推定)
参考までに、同時期の他の青春ホラー(例:『ラストサマー』)と並ぶ健闘といえます。 - 批評家からは「青春ドラマと侵略SFのバランスが秀逸」と高く評価されつつも、一部では「オマージュの域を超えない」という声もありました。
しかし長期的には、青春ホラーの隠れた名作として再評価が進んでいます。
ホラー映画界への影響
- 90年代ホラーが「ティーンドラマ+恐怖」という新定番を打ち立てた中で、『パラサイト』はそこにSF侵略モチーフを持ち込み、ジャンル融合の可能性を広げました。
これに影響を受け、00年代には学園青春を軸にしたサバイバル系やSFホラーが増えたと言われています。 - また、ウィリアムソンの「メタ目線の若者会話劇」は、この後のティーン向けホラー脚本に強い影響を与えました。
たとえば『デッドコースター』(ファイナル・デスティネーション2)、『ディスタービア』などのティーン・サスペンスにその系譜が見て取れます。
✍️ ライター的ひと言
『パラサイト』は、ホラーの定番“寄生侵略”を、90年代ティーンドラマのフォーマットで語り直した挑戦作です。
ケヴィン・ウィリアムソンの脚本ならではの若者同士の軽妙な会話と、ロドリゲスのエネルギッシュな演出の相性は見事で、今なお青春ホラーの“異端児”として語り継がれるに値する一本です。
ライター きのひなた

















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