つのだじろう『恐怖新聞』ホラー漫画レビュー


■ 恐怖新聞 ─ 予知と呪いが交錯する恐怖の金字塔

■ 作品の背景

1973年、『週刊少年チャンピオン』で連載開始。
当時のつのだじろうは『うしろの百太郎』で心霊ブームを巻き起こしていた最中でしたが、さらに“恐怖と予知”という新たな切り口でホラー漫画の幅を広げようとしていました。
オカルト研究にも熱心だったつのだ本人が、自らの怪奇体験や取材で得た知識を織り込んで構成し、リアリティを高めたのが特徴です。

1970年代前半は「心霊」「超能力」などがテレビでも大ブームになり、それに呼応する形で、漫画界でも怪奇・オカルトものの需要が急上昇していました。
そんな時代背景の中で『恐怖新聞』は「新聞が未来を告げる」という、日常に潜む恐怖を物語の軸に置き、一気に読者の心を掴んだのです。


■ あらすじ

高校生・鬼形礼(きがたれい)のもとに、ある日突然「恐怖新聞」が届きます。
それは未来に起こる恐ろしい事件や災厄を予言する新聞で、読むだけで寿命が百日縮むという恐ろしい代物。
礼は最初は信じられずにいましたが、新聞の予言が次々に現実化する中で、その運命に抗えず巻き込まれていきます。

恐怖新聞を断ち切ろうと必死にもがきながらも、逆にその恐怖に取り憑かれ、次第に自分自身や家族・周囲の人間にも影響が及んでいく──
“予知”と“呪い”が絡み合う圧倒的な恐怖体験が描かれます。


■ ホラー漫画界に与えた影響

『恐怖新聞』は、それまでの怪談や怪奇譚が中心だったホラー漫画に「予知」という概念を導入し、より現代的でリアルな恐怖を描き出しました。
また「日常に異物が入り込み、逃れられない」という構造は後の

  • 『漂流教室』(楳図かずお)
  • 『リング』(鈴木光司の原作とそれをもとにしたホラー文化)
    などにも通じる影響力を持ちます。

さらに

  • 新聞のような誰でも目にするものが恐怖のメディアになる
  • 主人公が抗おうとしても抗えない運命に追い込まれる
    といったホラー演出は、現代ホラー漫画やサスペンス作品のテンプレートとして受け継がれています。

■ おすすめポイント

『恐怖新聞』は今読んでも古びない「予知の恐怖」というアイデアと、つのだじろうの重厚なタッチ、怪奇への深い知識が融合した傑作です。
寿命を削りながらも真実を知ってしまう主人公の恐怖は、現代のSNS社会にも通じる不気味さがあります。
ホラー漫画ファンなら一度は読んでおくべき金字塔として強くおすすめします。

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