🎬 『ゾンビワールドへようこそ』映画レビュー

(Scouts Guide to the Zombie Apocalypse, 2015)

監督:クリストファー・ランドン / 脚本:クリストファー・ランドン ほか

作品の概要

スカウト活動をしている少年たちが、ゾンビパンデミックに巻き込まれ、街を救うべく奮闘する青春ホラー・コメディ。
一見バカバカしいプロットながら、スカウトならではのサバイバル技能を駆使してゾンビと戦うというアイデアが秀逸で、ティーン映画とゾンビ映画の“お約束”を絶妙に融合させています。

制作・時代背景

2010年代は『ウォーキング・デッド』の大ヒットを筆頭に、ゾンビものが再び市民権を得た時代です。
しかし、シリアス一辺倒のゾンビ作品が増えたことで「もっと笑えるゾンビものが欲しい」という声も強まっていました。
そんな中で登場したのが、この『ゾンビワールドへようこそ』です。

ゾンビ映画に青春コメディの要素を持ち込み、エログロや下ネタも交えながら、徹底的にB級的娯楽に振り切った本作は、むしろ時代の飽和したゾンビブームへのアンチテーゼとも言えます。

物語の魅力

  • スカウト×ゾンビという斬新な発想
    キャンプやボーイスカウトのスキルでゾンビに立ち向かうという設定は新鮮で、少年たちの成長譚としても機能しています。
  • 10代のバカバカしさと友情の物語
    いわゆる「青春バディもの」の要素をベースにしており、下ネタやオタク的ギャグを交えながらも、仲間と助け合う姿にほのかな感動もあります。
  • ゾンビ映画のお約束をきちんと踏まえた演出
    メイクやゴア描写は本格的で、ホラー好きにもサービス精神を忘れない作り。
    いわゆる「ロメロ型ゾンビ」へのオマージュも随所に感じられます。

興行収入・評価

  • 全米興行収入:約340万ドル
    (製作費は推定1500万ドル前後とされるため、残念ながら商業的には失敗作に分類されます)
    • 世界興行収入も約1600万ドルほどにとどまりました。
      →しかしDVD・配信市場では息の長い人気を得ています。
  • 批評家からは賛否両論。
    • 「くだらないが笑える」「ゾンビ映画のマンネリを逆に楽しんでいる」と評価する声もあれば
    • 「ただの下品なティーン映画だ」と酷評する意見もありました。
      Rotten Tomatoesでは44%(2024年時点)と、かなり割れる評価です。

ホラー映画界への影響

  • 正直なところ、映画業界に大きな変革を起こした作品ではありません。
    しかし、10代向けのホラーコメディとして一定の影響力を持ち、
    • タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら
    • ショーン・オブ・ザ・デッド
      の流れに続く“笑えるゾンビもの”の系譜として語られます。
  • またスカウト文化を題材にしたホラーというニッチな切り口で、ジャンル映画の多様性に一石を投じたのは間違いありません。

✍️ ライター的ひと言

『ゾンビワールドへようこそ』は、ゾンビ×青春×スカウトという“誰が思いつくんだ”というトリプルコンボを成立させたアイデア勝負の作品です。
興行的には振るわなかったものの、ゾンビ映画の「お約束」をきちんと踏まえつつ、10代のバカバカしさを全開で描いた点は、むしろ今後のホラーコメディに影響を与え続けるかもしれません。

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