
集中連載「プリンスを語ろう」Vol.10
10thアルバム「Sign ☮︎ the Times」
3枚分の衝動を2枚に凝縮した、プリンスの“玉手箱”

はじめに
**シオジリケンジ(通称:シオケン)**と
**音楽ライター・神崎いろは(通称:いろは)**が語る
「プリンスを語ろう!」。
Vol.8『Parade』で、
プリンスは音の温度と美意識を極限まで研ぎ澄ました。
その直後に生まれたのが、
2枚組というフォーマットに収まりきらないほど
過剰で、自由で、雑多な傑作――
**『Sign ☮︎ the Times』**だ。
この作品、実は
**3枚分のアルバム構想(Dream Factory/Camille/Crystal Ball)**があり、
そこから“いちばん美味しいところ”だけを掬い取って
2枚組に再構築されたと言われている。
つまりこれは、
この時期のプリンスのベストアルバム的存在でもある。
「これ、なんでもあり過ぎません?」
いろは:
改めて通して聴くと、
ジャンルの飛び方がすごいですよね。
シオケン:
うん。
ファンク、ロックンロール、バラード、
社会派、スピリチュアル、実験曲……
全部ある。
いろは:
統一感がないのに、
なぜか“プリンス”として成立してる。
シオケン:
それが、このアルバムの強さ。
「削れなかったから、詰め込んだ」
いろは:
普通、ここまで素材が多かったら
取捨選択しますよね。
シオケン:
でもプリンスは、
削れなかった。
いろは:
全部必要だった。
シオケン:
そう。
この時期のプリンスは、どのモードも本気だった。
Super Deluxe Edition が出たので当時のアウトテイクやデモも聴けるようになったけど
アレンジも色々試してた形跡があって改めて”音楽の鬼”だなっと思った(汗)
いろは:
努力を怠らないっていうか探究心?
「これは意識してたと思う」
いろは:
このバラエティ感、
やっぱり
The Beatles (White Album)
を思い出すんですが……。
シオケン:
俺も同じこと思ってた。
これは絶対、意識してる。
いろは:
統一美より、
個の衝動を優先した2枚組。
シオケン:
そう。
完成度より射程距離。
「今、俺の中にある全部」。
いろは:
だから聴き手は、
毎回違う入口から入れる。
「プリンス入門にも、沼の入口にもなる」
いろは:
「HUSEQUAKE」「IT’S GONNA BE A BEAUTIFUL NIGHT」のようなファンクの極北みたいな曲もあれば、
「PLAY IN THE SUNSHINE」「I COULD NEVER TAKE THE PLACE OF YOUR MAN」みたいな
ロックンロールナンバーもある。
シオケン:
「SLOW LOVE」「ADORE」のような極上のバラード曲も美しい、
「THE BALLAD OF DOROTHY PARKER」
「IF I WAS YOUR GIRLFRIEND」のようなプリンスでしか聴けない曲もいい
いろは:
1枚の中に、
何人プリンスがいるんだって話ですよね。
シオケン:
でも全部“本人”。
このアルバム、
プリンスの魅力が全部入ってる。
いろは:
まさに玉手箱。
シオケン:
『Sign ☮︎ the Times』は、
プリンスが
もう一度一人になって「これがPRINCEだ」と才能全開で差し出した献身アルバムだ。
空恐ろしいPRINCEの怪物的才能を体感できる名盤と言っていいと思う。

④ 次回予告|いろは
いろは:
次回は、
この“全部出し切った”あとに訪れる転換。
再び身体性と一体感を取り戻す
**『Lovesexy』(1988)**を語ります。
——続く。

















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